南紀熊野 地学散歩(11/19~21)その1

紀伊半島ではプレート運動によって形成された様々な地形を観察することができる。そこで、紀伊半島南部の海岸地形・火成岩体の観察のため南紀熊野の地学散歩をした。
国内では新型コロナの第三波が押し寄せていたが、訪問地はすべて屋外でほとんど人がいない場所ゆえ、感染リスクは極めて少ないと判断し地学散歩に出発した。

巡検サイト

事前学習(南紀熊野ジオパークHP)

南紀熊野の大地は、プレートの沈み込みによって造られた3つの地質体(付加体、前弧海盆堆積体、火成岩体)からできている。

 

11月19日(木)

飯田から南紀白浜までの道のりは約490㎞。朝食を食べてからの出発では半日を有効に使えないので朝3時半に出発。熊野の七里御浜には8時に着いた。

▼七里御浜

七里御浜は鬼ヶ城から熊野川河口まで約7里の長さの美しい海岸。熊野川河口まで運ばれてきた砂礫が、沿岸流の運搬・堆積作用により砂州(礫洲)を形成した。太平洋から打ち寄せる波は礫を玉石に磨き上げ、那智黒石など「御浜小石」と呼ばれる美しい石が生まれる。

▼大門坂・那智の滝・熊野那智大社

熊野古道の往時の面影を残す大門坂を登り那智の滝に向かう。

夫婦杉近くにある「大門坂茶屋」では平安衣裳の貸し出しを行っており、コスプレ衣装を身に着けた観光客もいた。

那智の滝:
大門坂の駐車場から1.4㎞、約300段の階段が続く古道を登りきると、那智の滝に続く車道に出る。

ブラタモリによると、那智大滝は、浸食に強い熊野酸性火成岩類流紋岩と比較的やわらかい熊野層群の地層の境界に形成された高さ133mの滝である。

<那智の滝で手を洗うやよいさん>

熊野那智大社:
那智の滝を見学後さらに470段の石段を登って熊野那智大社へ。

大社の隣には神仏習合の姿を伝える青岸渡寺(注)があり、その庭からは那智の滝を遠望できる。

(注)青岸渡寺は中世から近世にかけて隣接する熊野那智大社と一体化し、那智山熊野権現や那智権現と呼ばれ、全体で7寺36坊もの坊舎を有する神仏習合の修験道場であった。(wikipediaより)

▼橋杭岩

5㎞の古道散策(というよりトレッキング?)を終え、次は潮岬近くの橋杭岩へ。
橋杭岩は熊野層群の泥岩層の割れ目にマグマが上昇して入り込み、石英斑岩の岩脈として冷え固まった後、泥岩層が海水で浸食され橋杭のように残ったもの。

海岸に散在している橋杭岩の大きな岩の表面をみると白い石英が見える。ジオサイトの説明通り石英斑岩と思われるが、鉱物の知見がないので定かではない。

▼潮岬

潮岬は本州最南端に位置し,数種類の火成岩からなる火成複合岩体として知られている。

潮岬は海岸段丘が発達している。南海トラフで発生する巨大地震ごとに隆起を繰り返し、現在の高度まで持ち上げられた。潮岬はもともと島であったが、陸側から沖合いの潮岬(島)に向かって砂州が成長し、やがてつながり陸繋島となった。(南紀熊野ジオパークの説明資料より)

<潮岬遠望:写真右の段丘が潮岬の”島”。真ん中の砂州部から左が串本の町>

潮岬の観光タワーの食堂で、近畿大学水産研究所が完全養殖に成功したマグロ―「近大マグロ」のどんぶりを食べた。

▼フェニックス褶曲

今回の地学散歩のメインイベント、すさみ町にあるフェニックス褶曲に向かう。有名なジオサイトでありながら海岸の危険な場所に位置するためか、あるいは観光地化を恐れてか詳細な場所はどこにも載っていない。そこで事前にネット検索して何とか道順のある記事を確認し、その情報にしたがって急斜面の山道を降りて海岸線を探したところ、ついに念願のフェニックス褶曲に到着した!

この褶曲は、かつての海溝に堆積した牟婁付加体の砂岩泥岩互層が海洋プレートの沈み込みによって付加体となる時に形成された。砂岩層が完全に固まる前に陸側に押し付けられ折りたたまれたものである。地層は全体として上下が逆さまになっている。世界的にも有名な褶曲で、中学校の理科の教科書にも採用された。(南紀熊野ジオパークの説明より)大地のダイナミックな動きが凄い! 

上の写真の向かって右側の面にさらに大きな褶曲があるが、波が高く回り込めなかったので、斜めのアングルから撮った写真が下の写真。

褶曲の地形は海岸線の数か所にわたって見られた。

参考:もう一つの褶曲観察地までの道順

太平洋に沈む夕日:
今日の天気は曇りの予報だったが、幸い天気に恵まれ宿に向かう途中、太平洋に沈む夕日も見ることができた。

南紀熊野 地学散歩(11/19~21)その2に続く


事前学習参考サイト:

南紀熊野ジオパーク
https://nankikumanogeo.jp/

那智の滝
https://www.nachikan.jp/kumano/nachi-no-taki/

紀伊半島の海岸地形(潮岬観光タワーで近大マグロ)
http://www.nishida-s.com/main/categ4/20kii/index.htm

南紀熊野巡検(広島大学):
http://1604-016.a.hiroshima-u.ac.jp/chiken/guide/wiki.cgi?page=20171103%2E04%2E05

ブラタモリ 4月20日放送~熊野:
http://halohalo-online.blog.jp/archives/2019-04-21.html
ブラタモリ 4月27日放送~熊野の観光:
http://halohalo-online.blog.jp/archives/1074583551.html

ぶつぶつ川 火野正平こころの旅:
https://www.nhk.or.jp/kokorotabi/route_2017autumn/20171018/

南方熊楠記念館:
http://www.minakatakumagusu-kinenkan.jp/

熊野本宮大社
http://www.hongutaisha.jp/

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