市田柿とトマトの栽培を手掛ける「ヌーベル・ファーム泰阜」 6/22

南信州新聞の新聞記事に、「廃校の旧泰阜北小学校で作ったトマト販売」の記事があったので、旧泰阜北小学校を訪れてみた。泰阜村までの道は細く曲がりくねっていて、昔は行くのに小一時間を要したが、今は2車線の道路や、谷をまたがる橋が整備され、堤屋からも25分くらいで行くことができる。

学校のグランドに設置されたハウスには、「リンカ」という品種のトマトが水耕栽培で整然と並んでいた。また体育館は選果場として、また秋には干し柿の機械乾燥設備(赤外線乾燥炉)の干場としてうまく活用されていた。親会社の丸西産業には、村から校舎が安く貸与されるとともに、補助金が出ているとのこと。作られたトマトは主に京阪神の消費地で販売される。

▼トマト栽培は、低段密植のポット栽培
ハウスに設置したセンサーが、気温や地温、水分、肥料濃度などをリアルタイムで計測。最適なタイミングで水や肥料を与えることができ、品質の均一化が図られている。

▼大玉トマト「リンカ」が整然と同じ位置に生っている

こうした生産設備を見ると、今後の農業のあり方が見えてくる。
まず安定した品質の良い作物を継続的に生産するには、準工場的な環境管理が必須であり、そのためには、農村の資源(公共施設他)を活用した設備固定費の削減等、村で運営するがゆえのコストの優位性が必要である。
さらにその土地の気候・風土、独自の品種改良など、地域の特性を活かした作物の選定と差別化が必要であり、その差別化された商品の特徴を、消費者の価値としてアピールし、販売優位の直販チャネルを形成していく必要がある。
こうしたSCが構築できれば、産業として安定し、そこで働く人にも未来が見えてくる。もちろん無農薬、有機農業といったこだわりのある作物も、一部の消費者向けには作られるのであろうが、最終的には工場の管理手法を応用した農業の6次化が今後のあるべき姿であろう。そうしない限り、産業としての持続性と安定的な雇用を生み出さない。

JAや飯田市の漠然とした事業企画に対し、丸西産業の取り組みは、農業資材・食品流通会社としての経験や、これまでの顧客チャネルを活かした、資本シナジーのあるうまい取り組みのように思えた。

ヌーベル・ファーム泰阜で働く方は村民だけでなく、飯田市からも通っている人もいるが、「道路が整備されたことで、通勤はとても助かっている」と言っていた。今年開通する龍江ICにも15分程度でアクセスできるから、通勤や商品を市場に届けるための交通の利便性も整備されているといっても良い。地町村や国の公共投資内容ともシナジーがあると感じた。

尚、ヌーベル・ファーム泰阜の多くの収益は干し柿による販売のようだ。秋だけでなく夏も安定的に収益をあげるために、トマトの水耕栽培をはじめたとのことだった。

南信州新聞記事:
ヌーベル・ファーム泰阜がトマト直売 [ 2019年 6月 21日 金曜日 16時56分 ]

 泰阜村と飯田市松尾明の丸西産業が共同出資し、市田柿とトマトの栽培を手掛ける「ヌーベル・ファーム泰阜」(同村平島田)は21日、生産拠点の旧北小学校で摘みたてトマトの直売を行った。先週末に続いての開催に、早速リピーターの姿もあり、自宅用に贈答用にと、次々手に取り買い求めていた。

 同社のトマト栽培は、低段密植のポット栽培を採用するとともに、ハウスに設置したセンサーが、気温や地温、水分、肥料濃度などをリアルタイムで計測。最適なタイミングで水や肥料を与えることができ、品質の均一化が図られている。

 品種はしっかりとした果肉と酸味が特徴的な「りんか」。栽培リーダーの三島康世さん(30)は、「今の市場には甘みの強いトマトが多いので、酸味のあるりんかで存在感を発揮したい。甘いトマトというよりも濃いトマトを栽培したい」と力を込める。

 昨年の生産量は約50トン。従来は全量を丸西産業に収めていたが、「地元の人たちに食べてもらう機会をつくりたい」と、昨年初めて直売を実施したところ好評で、今年も14、15日と21、22日に企画した。

信毎記事:自慢のトマト、直売2年目 泰阜村の会社

 

関係記事:

干し柿の販売が好調 泰阜村ヌーベルファーム 加工施設で生産本格化

南信州経済 [ 2018年 12月 25日 火曜日 15時07分 ]

泰阜村の第三セクター「ヌーベル・ファーム泰阜」(同村平島田)が旧泰阜北小学校で作った干し柿を、今月計4回、校舎内の「干し柿の里販売所」で販売したところ、昨年の倍以上の売り上げになるなど好評だった。

飯田市松尾明の丸西産業をパートナーに2014年に立ち上げた同社は、これまで同校グラウンドにパイプハウスを建設し、国内でも珍しい低段密植ポット栽培などのハイテク化された高原トマトを栽培。冬場は市田柿を使った干し柿の生産加工を行っている。

一昨年、同校体育館に遠赤外線を使った干し柿加工施設を建設。乾燥期間を通常より1週間から10日短縮するなど生産の効率化を図った。販売所は「村のファンを増やしたい」と地方創生拠点整備交付金を活用して旧調理室をリフォーム。昨年12月に干し柿を、今年5月にトマトを販売した。

干し柿は今年、下條村を中心に村内も含め約2・5ヘクタールで収穫した。購入分も含めると計75トン余の干し柿の皮をむき、そのうちの約20トンを出荷した。

4日間で村内外から180人余が訪れた対面販売会は、1キロのお徳用(税込み2500円)や500グラムの贈答用(同2400円)で約80万円を売り上げたほか、通信販売で約60万円の注文があった。

トマトや柿の生産責任者三島康世さん(30)は「昨年よりも生産方法を工夫し、質も良いものができた。ここでの販売は生の声が聞けて勉強になる」と話し、来年度は100トンの皮むきを目標に掲げた。

参考技術資料:トマトの水耕密植ポット栽培

 

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