四国遍路パート2 第12日目(3月3日)

■お遍路第12日目(3月3日) 晴れ時々曇り

昨日は宿の部屋が狭く少々後悔していたが、朝食の際ご主人と話をすると、実はお遍路さんにとって大変良心的な民宿であることが判りうれしかった。遍路客は私1人だったのでご主人と話をしながら朝食を頂いたが、話の中で「昨日、女性のお遍路さんの宿泊予約があったが、泊まり客が男ばかりで居心地が悪いだろうからお断りした」とのことだった。商売優先ではないこうした心遣いがうれしい。「その女性は、おそらく昨日まつちや旅館で一緒だった方だと思う」と話すと、「遍路道で彼女に会ったら謝っておいてください」とのことだった。

ご主人は温和でとても良い方で、今日越えていく鶸田峠(ひわた峠)までの道程についても丁寧に説明をしてくれた。また昨夜の夕食では、ご主人のお父さんが私の話し相手になってくれ、「内子座がなぜ始末されずに済んだのか」とか、「内子は小さい町だが大江健三郎とかアサヒビールの創業者や日商岩井の創業者を輩出している」とか、「愛媛県知事の観光行政の取り組み」などを説明してくれた。こうのようにお遍路さんと親しく話をする宿は、施設的に古くてもリピーター客が多い。

▼朝食の後ご主人にお礼を述べ、7時15分頃宿を出発した。民宿を出てしばらく行くと、道路のゴミを掃除しているおばさんが私を見て、「ちょっと30秒待って」と言って家に飛び込み、「これでお茶でも買って」とお接待のお金をくれた。彼女自身も何度もお遍路さんをやっているとのことだった。ちょうど後ろから別のお遍路さん(愛知県の方)が来ると彼にもお接待を渡していた。せっかくなので二人で記念撮影をしてお礼を述べた。

▼内子から歩くこと約2時間で小田川沿いにある大瀬の集落に到着した。ここは大江健三郎が生まれた地である。両側が山に囲まれた狭い街道筋の町並みを見ながら、彼はここでどのように過ごしたのだろうかと思いを巡らせた。
 

▼鶸田峠に向かって登って行くとますます急傾斜の谷になるが、よくしたもので必ず人家があり、急な畑がよく手入れされていることに驚いた。地元のおじいさんが柿の剪定をしていた。柿の種類を訪ねると主に富有柿を作っているとのことで、「きれいにしていますね。」と言葉をかけると、うれしそうだった。

▼民宿から歩くこと4時間、砥部町の休憩所”およりんか”では、地元の方が手作りの饅頭とお茶で接待してくれた。ちょうど件の女性のお遍路さんとも会ったので、民宿シャロンのご主人の話をした。彼女は近くのビジネスホテルに泊まれたそうでシャロンのことは気にはしていなかった。会社を辞め、新しい就職先の仕事が始まるまでの間、お遍路をしているとのことだった。

地元の方とお茶をのみながら少々世間話をした。今年は四国としては珍しく大変寒く、気温もマイナス14度になったとのこと。さらに数日前の雨の日は、この辺りは40センチの雪が積もったとのことだった。お饅頭の接待を頂いたので、今朝路上でご婦人から接待していただいたお金をお礼として渡し記念撮影をした。写真の左の方のお嫁さんは山梨から来ているとのこと。「うちの親戚の娘は高知に嫁いでいるけど、遠いところ同士の結婚が普通になってきているんですね」と言うような雑談をし、鶸田峠に向けて出発した。

 

▼鶸田峠(標高790m)はお遍路の中で難所の一つに挙げられているが、民宿シャロンのご主人の説明のとおり、遍路道のほとんどは軽トラが通れるような道路であり、またゆっくりと高度を上げていくので、きついアルバイトとには感じなかった。ただ、標高700メートル付近の遍路道にはまだ多くの雪が残っていてびっくりした。

▼鶸田峠を越え標高500mの九万高原まで下り、今日の宿ガーデンタイムには15時過ぎに到着した。夕食は民宿磯屋で一緒だった元航空管制官の中村さんと、愛知県から来たというお遍路の方とご一緒した。中村さんの話によると、飛行機の部品落下事故のような問題は頻繁に起きていて公になっていないだけだそうだ。「航空管制官は神経を使う高度技術の仕事だが、同じ国家公務員と大差のない給与だ」とこぼしていた。「夜勤明けは神経が高ぶっているのでなかなか眠れず酒を飲んで胃を壊した」と話してくれた。一方、愛知県からきたお遍路さんは、定年退職後野菜作りをしているが、春になると畑の仕事があるのでこの時期にお遍路をして数年かけて回っているとのことだった。

ガーデンタイムはプチホテルであり、久しぶりにバストイレ付きのベットで寝た。旅館はアットホームで良いが、何をするにも畳に座らねばならず膝が少々痛い。やはり椅子の生活は上下移動が少なく楽だ。外国人のお遍路さんも多いが、旅館の連泊はたいへんではないかと思った。

▼今日の歩行ルート 民宿シャロン(内子)~ガデーンタイム(久万高原) 38㎞ 

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